2018年の夏、カナダのブリティッシュコロンビア州にあるOsoyoos(オソヨース)という町のチェリー農園で、収穫の仕事を経験しました。
初めての仕事、初めての町、初めて会う人たち。初めて尽くしで、さらには情報も少ない。最初はどうなることかと思いましたが、結局はとても充実した1ヶ月になりました。
〈この記事でわかること〉
- チェリーピッキングはどんな仕事か
- チェリーピッキングのメリット/デメリット
- チェリーピッキングの仕事がない日の過ごし方
チェリーピッキング仕事の概要
時期
夏 6〜9月
場所
カナダでチェリーピッキングの仕事を探すなら、BC州のOkanagan(オカナガン)という地域に行く人がほとんどです。
チェリー前線(収穫期)に合わせて働く場合は、南の町から北の町へと移動することになります。
Osoyoos(オソヨース)
↓
Oliver(オリバー)
↓
Penticton(ペンティクトン)
↓
Kelowna(ケロウナ)
わたしが滞在していたオソヨースで収穫が始まるのが6月中旬頃で、最北のケロウナで収穫が終わるのが9月です。
収穫するフルーツを変えると(リンゴなど)、10月以降も農園で働くことができます。
仕事内容
収穫
特に人手の必要な収穫期に、短期集中で農園をお手伝いする仕事です。一般的に「ファームジョブ」と呼ばれます。
収穫用バケツを首からさげて、チェリーをとります。
収穫用バケツは、写真右側
農園が貸してくれる脚立を使って、高い位置のチェリーも収穫します。
脚立に乗るのが苦手な人にとって、この仕事は難しいと思います。脚立なしで収穫できる高さのチェリーばかり獲っていると、オーナーからもピッカー仲間からもいい顔をされません。
オーナーは、木の高い位置にあるチェリーまで残らず収穫してほしいと思っています。
低い位置にあるチェリーをとるのはとても簡単なので、そこばかり収穫しているとピッカー仲間からは「ずるい」と思われてしまいます。
チェリーの収穫自体は、決して難しくありません。チェリーの実は、小さくて軽いので、大した力もいりません。
スピード(効率)を意識し始めてからが本番です。
チェリーは実のつき方に規則性があるので、慣れると手の感触だけで収穫できるようになります。木に対する立ち方にもコツがあります。このあたりは、農園のオーナーか、ピッキング経験者に聞くと教えてくれます。
【2018年6月5日 23:05】
「チェリーピッキングしに来た」と伝えたら、それぞれ摘み方のレクチャーが止まらない。
「枝に対してこの向きに立つんだ」「チェリーをいちいち見るのは素人」「だんだん手が覚えてくる」「目をつぶってても摘めるようになる」と。— 海外バンライフの記録 (@cym_diary) June 28, 2021
2018年6月5日 23:08】
収穫時の手の動かし方も熱心にジェスチャーで教えてくれるけど、一回もやったことないから正直全然わからん。
習ったままに「こう?」ってやってみせると、「YEEEEES!」「PERFECT!!!!!!」ってべた褒め。
まだ1日も働いてないのに、なんかできる気がしてきた。(全員酔っ払い)— 海外バンライフの記録 (@cym_diary) June 28, 2021
チェリーの実や枝を傷つけずに収穫することは、農園オーナーにとって、とても大切なことです。
給与は出来高制なので、ピッカーにとってはスピード勝負の仕事ですが、オーナーは違います。売り物になる果物には傷をつけてほしくないし、翌年以降のために木も大事に扱ってほしいと思っています。当然です。
アクシデント的に小枝が折れてしまうくらいなら、許容範囲ですが、収穫後の木の周りに、あまりにたくさんの枝や葉が落ちていると、オーナーは見逃せません。オーナーにとって不利益なことが続くと、最悪クビになる場合もあります。
「丁寧さ」と「効率」のちょうどいいバランスを見つけることが大切です。
勤務時間
- 正午前後は暑くて仕事にならない
- 太陽が高くなると、強い光が目に入って仕事がしづらい
という理由から、夜明け前からヘッドライトをつけて仕事を始める人が多いです。
午前中に仕事を終えて、午後はのんびりするという人もいます。午後もピッキングやパッキングをして働き続ける人もいます。働く時間は、自分の希望である程度調節できます。
パッキングは時給制(時給12ドルくらい)で、確実に給与を得られます。室内での作業になることが多いので、気温の上がる午後でも直射日光を避けて働けます。
給与
給与面は、下の記事に詳しくまとめました。

ビザ
チェリーピッキングの仕事をするなら、ワーホリビザなどの働けるビザが必要です。
実際には、ワークビザなしで働いているピッカーも多く見かけますが、違法です。とはいえ、ビザのことであまり厳しく取り締まると、農園の人手が足りないという現状もあるようです。
仕事の見つけ方
仕事の見つけ方は、下の記事に詳しくまとめました。

チェリーピッキングの仕事のメリット
「仕事」と「遊び」のバランスをとりやすい
稼ぎたい額や、望む生活スタイルに応じて、働く時間数を調節しやすい仕事です。ピッキングを始める時間、終える時間もある程度本人に任せている農園が多く、時間の自由度は高めです。それを叶えるための農園選びは重要ですが。
お金を貯められる
チェリーピッキングは時給制ではなく、出来高制です。ピッキングのスピードを上げれば、上限なく給与もあがります。また農園生活では、生活コストをかなり抑えられます。
普段できない経験&普段出会わない人たちとの出会いがある
たった1ヶ月とはいえ、人生で初めて農業に関わる仕事ができたのは、とてもいい経験になりました。
わたしは、チェリーピッキングの仕事を通して、それまで以上に食に興味を持つようになりました。スーパーで食材を選ぶとき、産地にこだわるようになりました。
農園のオーナーや、ピッカー仲間など、この町に来なければ絶対に出会えなかった人たちとの出会いは宝物です。
すっかり見慣れたオソヨースの町を車窓から眺めていると、つくづく濃い1ヶ月だったなと。着いて早々に車が故障したり、なかなか仕事が見つからなかったり、前半は不安だらけ。でも後半は、仕事に遊びに充実した毎日。いい出会いもたくさんあったし、勇気を出してオソヨースに来て本当によかった。
— 海外バンライフの記録🚙 (@cym_diary) July 11, 2021
チェリーピッキングの仕事のデメリット
思うほど稼げない(特に未経験者)
上のメリットに書いたことと矛盾しますが、ポイントは「思うほど」の部分です。
インターネットでチェリーピッキングについて調べたり、経験者の話を聞いたりすると、1日に3万円以上稼げるイメージを持つかもしれませんが、それはごく一部の人です。

思うほど働けない
チェリーピッキングの仕事は、天候の影響を大きく受けます。
収穫時期は年によって多少ずれます。張り切って現地入りしても、すぐには仕事がないこともあります。
収穫時期を迎えたあとでも、雨やオーナーの都合で仕事が急に休みになることがあります。
事前に「このくらいの日数働こう!」と意気込んでいても、実際にはそれを下回ることが多いです。
体力を消耗する
チェリーピッキングは、屋外の仕事です。正午が近づいてくると、気温がどんどん上がり、とても暑いです。体力勝負です。
日差しが強いので肌が焼けます。白肌をキープしたい人にはおすすめしません。
チェリーピッキングをする町での滞在の仕方
農園内でキャンプ(寝泊まり)できるかどうかは、オーナーの意向によります。
わたしは、農園の敷地内で車中泊をさせてもらっていました。同じ農園のピッカー仲間は、農園内にテントを張っていました。
オソヨースの町には、Baptist Churchという教会があります。農園内でキャンプしない(できない)場合、この教会の裏側のスペースで、寝泊まりするピッカーが多いです。
【2018年6月5日 14:00】
Baptist Churchという教会に立ち寄る。教会のご厚意で、無料で携帯を充電させてもらえたり、シャワーを借りられたりすることもあり、チェリーピッキングの仕事でオソヨースに来た人が集まってくる。この町で働く間、教会裏のスペースにテントを張って寝泊まりする人も多い。— 海外バンライフの記録🚙 (@cym_diary) June 28, 2021
チェリーピッキングの仕事がある夏の間、教会のご好意で、無料でシャワーが借りられたり、携帯電話の充電をさせてもらえたりします。
【2018年6月26日 13:40】
教会には、シャワーを借りるため、2日に1回立ち寄る。シャワーを借りない日でも、友達に会いたくて行くこともある。特に待ち合わせはいらない。誰かいる。
行きつけのスーパーのレジの人や、毎朝同じ時間に散歩してるおじちゃん、だんだん顔見知りが増えてきた。— 海外バンライフの記録🚙 (@cym_diary) July 2, 2021
毎週土曜日には、無料の夕食をいただくことができました。本当にありがたいことです。


この教会は、ピッカーが多く集まる場所です。仕事の情報を得られることもあります。そして、きっと友達もできます。
【2018年6月5日 14:30】
この教会に来ると、チェリーピッカー仲間とたくさん知り合えるのもいい。まだシーズン初めだから、人もまばらだけど、仕事の情報交換は活発だ。
なにせわたしは未経験者なので、仕事探しの方法や注意点までいろいろ教えてもらう。チェリーの摘み方にもコツがあるらしい。— 海外バンライフの記録🚙 (@cym_diary) June 28, 2021
Wi-Fiはマクドナルドやカフェに立ち寄ったときに利用する程度で、基本的にはインターネット環境のない生活でした。農園によっては、Wi-Fi付のところもあるそうです。
どんな人がチェリーピッキングの仕事をしているか
カナダ国内では、ケベック州の人(ケベクワ)が圧倒的に多いです。
カナダ国外からだと、フランス、メキシコ、アルゼンチンあたり。
アジア人は少ないです。中国人、台湾人、韓国人、ひとりも出会いませんでした。日本人も少なめで、わたしが出会ったのは1ヶ月間で10人くらいです。
男女比は、7:3か8:2くらいでしょうか。男の人のほうが多いです。
年齢層は20代〜30代前半が多いです。40歳前後の方にも数人会いました。
余暇の過ごし方
チェリーピッキングの仕事がない時は、ほぼ自然の中で過ごしていました。
夏のオソヨースは、日中の気温が35度を超えることも多く、川や湖に入ることが欠かせませんでした。ビーチサンダルや水着、浮き輪など、水遊びグッズをお忘れなく。オソヨースの町でも購入することができます。

「午前中にチェリーピッキングの仕事をして、午後は自然の中で思い切り遊ぶ」という生活スタイルがとても好きでした。最高の夏でした。
仕事探しなど苦労したことも多々ありますが、素敵な農園オーナーとの出会いや、ピッカー仲間と仕事に遊びに全力だった日々は一生残る思い出です。
【参考】筆者がチェリーピッキングを経験した時期
2018年6月上旬〜7月上旬(当記事の情報や感想は当時のものです)